「新聞が対象になった」ことが問題なのではない

このエントリーをはてなブックマークに追加


軽減税率の対象に新聞が入ることとなり世の中が騒いでいる。

bylines.news.yahoo.co.jp

 

このあたり、世の中の人は「裏の取引」に思いを巡らせ、不正を暴く、不正に抗うことが好きなのだなと感じる。

新聞よりも重要と思われる光熱費が含まれていないことに対して強い違和感を感じている人が多い。また、新聞社が「知識」に対する課税に抗うことと「新聞を軽減税率」の範疇に入れることを等価としていることにも、やはり首を傾げて当然だ。

 

 

彼らがやっているのは政治だ。選挙に勝つためには票が必要なように、法案を通すためには圧力が必要。だから、僕は「やり口が汚い」とは思わない。重要な法案であれば多少の利害は清濁併せ呑んでなんとしてでも通すべきだろう。それが日本の将来を導いていく政治家や官僚が持つべき毅然とした態度である。であるからこそ

問題は「項目は何か」ではなく「軽減税率が日本の将来のために正しく必要な制度」ではないだろうか?

 

さて、その上で伝えたいことは「軽減税率は日本税史上の汚点」となることだ。これがいい制度ではない。まったくの改悪だ。その理由を述べたい

  • 税はめんどくさい

   税は驚くほど申請がめんどくさい。国税庁の運営コストも大きければ、申請側の「税制の理解」という意味や手間という意味でもコストが高い。であるからこそ、「税はシンプルな方がいい」というのは基本理念である。それなのに「項目別に消費税が違う」「持ち帰りか店内かで税が変わる」というのは馬鹿にならないコストを生む。日本では近年オンラインでの確定申告を可能にするように国税庁が必死にe-Taxの導入に勤めている。しかし、このような細かい税の変更は社会システムの利便性の発達を犠牲にし続けるだろう。

   答えはNOだ。この制度で「平等に」すべての人が食品に対する購入コストを下げる。一番得をするのは税率が下がってより物を売りやすくなる企業側だ。つまり、この制度は低所得者向けではなく企業向けの政策になってしまう。本末転倒だ。

  • なぜ軽減税率なのか?

   すでに言われていることではあるが、軽減税率ではなく支給の方が効果がある。もし政府が対象としているのが「月20万円の所得で5万円を食費に使う」ような家庭であるとするならば、彼らが2%の減税で受ける恩恵は月1000円。年1.2万円だ。このような世帯を低所得者世帯として、日本中のこのような世帯に同額を支給するのと何が違うのか?高所得者も得をするので、効果が薄いために1兆円の予算を割くと言っているが、もし上記のような世帯1000万世帯に1.2万円ずつ支給すると1200億円で済むではないか。もちろん運営コストを含めて考えるともう少し高くつくだろうが、それでも2000億はこえないだろう。つまり「軽減税率はコスパの悪い政策」なのだ。

 

 

 

さて、新聞が入ったとかどうとか言ってる場合ではないと思う。軽減税率は悪政だ。僕は一人の経済学徒としてこの制度を適用するようになった背景から、導入を強く推し進めるように携わった政治家に疑問しか抱かない。彼らに、この言葉を贈りたい。

 

「あなた方は何のために政治家をしているのか?」